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ボツ原稿:ハロワク締め文<27独白>

※これはリボーンで出した合同誌「14歳のハローワーク」締め文にしようかなーと考えていてボツったお話です。(お話というほどのものではない)






●ハロワク本を、ツナが読みました。

 ぱたん、と本を閉じる。
(教科書以外の本、久しぶりに読んだなぁ……)
 身体が固まった気がする。ふぁ~あ、と。欠伸と同時に伸びをした。そのまま、背後のベッドに寄り掛かる。
 手の中の本をもう一度開き、ぺらりぺらりページをとめくると、今読んだばかりの内容が頭の中に呼び起こされた。
「いろんな職業が、あるんだ」
 知らなかった。
 小さな頃は、巨大なロボットになりたかった。憧れのヒーローに、俺もなれると思ってた。
 それが不可能だと知ったのは、小学校も半ば頃。
 その頃になると俺は、足も速くなければ頭もよくない自分に気付きだしていて、与えられた「ダメツナ」という称号を嫌いながらもどこかでそれに安堵していた。
 だってダメツナなのだ。
 できなくて当たり前。
 それはとても、楽だった。
(…でも、リボーンがきたから)
 無理矢理に尻を叩かれて、諦めないことを覚えさせられた。
 乱暴で、どうしようもなく、理不尽で。
 俺様な家庭教師。
 世界が一変した。
(……大切なものも、たくさんできた)
 親友。
 仲間。
 守りたいもの。
 それはみんな、リボーンが来てから得たものだった。
 ぺらり、とまたページをめくる。
(今ならまだ……俺にはたくさん、選ぶことができる道があるんだ、よな?)
 手の中にあるのはただの紙の束なのに、それがものすごく重く感じた。
 その全ての可能性を、捨ててしまうことへの恐怖。
(でも、さ。リボーン)
 はちゃめちゃな扱きに逃げて、理不尽な現実に怒って、やりきれない想いに泣いて、なんでもない毎日に笑いあった。
 その全てに、リボーンがいる。
(今更…さ、考えられないよね)
 リボーンがいない日々も。
 その中にいる俺も。
 今だって怖くて、逃げ出したい気持ちで一杯だけど。大切な人達を、誰ひとりとして失いたくなかった。
 だから。
(まだ時々迷うけど。俺は、俺の意思で、きっと…)
 失わないために。
 大切な場所を守るために。
 未来はわからない。けれど。
(だってさ)
 ぱたり、と閉じた本の、なめらかな表紙に指を滑らす。
(俺はやっぱりお前の生徒、だもんな)
 閉じた本の上でぎゅ、と握った手の中に。
 未来を、俺は掴んでいた。
 

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サヨナラの空に彼女(ハル27)

 優しい時が過ぎるのは余りにも早くて、宝石のような日々は過去のものとなった。


 ツナさん、知ってますか?
 ハルには、ひとつだけ、誰にも負けないとっときのものがあるんですよ。
 ハルはそれを思うだけで、心がふわふわ~って軽くなって、きゅきゅーってときめいて、とおってもハッピーでスウィートで優しい気持ちになれるんです。
 だから、ハルのことは心配しないでください。
 今のハルは、ツナさんの足手まといになっちゃうって、ハル、わかってます。
 だから、今はついて行きません。
 でもでもっ、絶対に強くなって、絶対に絶対に後から追いかけます!!
 覚悟しててくださいね。
 ハルはツナさんがびっくりするくらいダイナマイトで清楚な知的美人になる予定ですから!
 だから、それまで、ハルはハルがやるべきことをします。
 あ、そうだ! ハル、イタリア語を習い始めたんですよ? 先生にも覚えがいいってよく褒められちゃいます。流石ハルですね!

 でもホントは、すっごく寂しいです。
 ツナさんに会えなくなるって考えるだけで、眠れなくなっちゃうくらい、胸がぎゅぎゅ~って苦しいです。
 ツナさんと、ずっと一緒にいたいです。
 だから、ツナさんの隣に早く立てるように、ハル、ずえったいに頑張ります!
 見ててくださいね!
 ハルの、ツナさんを想う気持ちは、世界最強です!!

 

「……はは、ハルらしいや」
 別れ際に渡された手紙が、手の上でかさりと音を立てる。
「寝ておけダメツナ。向こうに着いたら暫くは休むヒマもねーぞ」
「………うん」
 膝に散らばった、いくつかの封筒。
 それを全て開ける頃には、俺は何を思っているだろう。
 リクライニングチェアに背を預けて、目を閉じる。
 最後に見えた空はどこまでも青く透明に澄んで、まるでもう戻ることのない輝かしい日々の象徴のように、そこに在った。

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水底に消ゆ(6927)

!注意!


えらい暗いです。
死にネタです。
それでもいいと言う方は、どうぞ。

ワンクッション。コチラから。

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誓い

今年の24時間テレビのテーマ。
すなわち、その頃に書いてたネタというわけです……(汗)











「誓い」



「…けしてお傍を離れないと、誓います。この命の最後まで、貴方に捧げることを」

 静かに、しかしはっきりとした声は空気によく通った。主の手を取り口付けるかに見えたその仕草は、しかし手の甲に額づくだけに止まる。

「…獄寺くん」

 離しがたいと言う様に手を握ったままの細身の美青年を、そのすぐ脇にいた背の高い青年が、いかにも楽しそうに喉の奥でくぐもった笑いを零し「そのヘンにしとけよ獄寺。ツナが困ってんぜ」と止めた。途端に噛み付く友人を笑顔でいなし、いつも笑みの形に緩んだ唇を大きく開く。

「なんかさ、想像すると楽しくなるな! これからどうなんのかさ、さっぱり予測つかねーもん!」

「……そうかな。俺なんか怖くてたまらないけど」

 裏表のない青年の笑みに、しかし輪の中心にいた人物が気弱な言葉と、しかしそれを裏切るような迷いのない表情で苦笑を漏らした。

「十代目! 気になさることはございません! この野球馬鹿の言葉に深い意味なんてありませんよ。なんっせ頭にゃなんにも詰まってないんですからね!」

「ヒッデーなぁ獄寺」

 辛辣ともいえる言葉に、しかし背の高い青年は笑っていた。その笑みがしんと沈むように奥にこもり、代わりに真摯な表情が顔をだす。

「俺は、友達は絶対に裏切らねぇ」

「山本」

「極限熱いな! 俺も誓うぞ! 俺はいつでも極限であると!」

「…てめーは誓わなくともそうだろが」

「ははは! 笹川のにーちゃんおもしれーよな!」

「む? そうか?」

「…お兄さん……」

 力が抜けたように肩を落とした青年の袖を引っ張る少年。

「俺! 俺もツナの力になるんだもんね!! ボスは好きにしていいっていったんだもん!」

 いち早く故郷へと帰っていた少年は、久しぶりに訪れた日本に気後れしているのか、それとも集まったメンバーの中で一番の安全地帯であると無意識の認識をしているのか、再会してから穏やかな青年の傍を離れない。

「ランボ」

 声は静かな囁きのように、しかし幾多の感情を含む。
 少年は嬉しそうに、誇らしそうに、しかし周囲の無言の威圧に負けて青年の袖を手放した。
 その横で、肩先まで伸ばした髪を一つに括った青年がくぐもった笑いを零す。

「誓い、ですか。そんな陳腐なものに何の意味があるのでしょうね。言葉で約したものなど、塵ほどの拘束力もない」

「骸」

「僕は貴方を守るでしょう。けれどそれは、交換条件によって僕がここに在るための契約でしかない。仲間意識などという生ぬるいものはご遠慮いたしますよ」

「…わかっている。それでも、ありがとう」

「相変わらず甘い…」

「そうかな。…クロームたちも行くんだろう?」

「連れて行くのはクロームだけですよ。あの二人は僕がいなくともやっていけますから」

「……そうなんだ」

 思いもかけない驚きに、青年の言葉が止まる。
 己の断ち切ってしまった絆に今更ながらに慄く青年はしかし、自分が断ち切ったものがそれだけではないと、知っていた。

「くだらない。あまり群れてると咬み殺すよ」

「…雲雀さん」

 少し離れた場所で腕を組んだ彼の肩には、既に見慣れた学ランの姿はない。
 そして己が家庭教師がムリヤリ連れてきたとの言葉が示す当然の帰結として、下手に触れば直ぐにでも暴れだしそうなほど不機嫌だった。

「そういうな雲雀。たまにはこういうのもいいだろ?」

 一部のみ氷点下の空気を全く理解しない口調でのたまった家庭教師を、物騒な麗人が一瞥した。

「赤ん坊の言うことだからね。今日だけは我慢してあげる。でも君の頼みでも二度目はないよ?」

「ああ、わかったぞ雲雀」

 背の高い青年の肩で偉そうに笑った家庭教師がちょっと憎らしいと苦労症の青年は思った。けれど取り合えず黒で身を固めた麗人は苛立ちを周囲にぶつけることは止めてくれたようで。

「それで雲雀。オマエの誓いはなんだ」

「……僕は、僕は僕のしたいことしかしない」

「「「「…………」」」」

 それは誓いといわないのでは、とまだ幼い少年とのたまった本人以外が心をひとつにしたが、しかし逆らえずに沈黙する。

「そうか」

 特に何を言うこともなく頷いた家庭教師に微妙な視線を注ぎつつ、空気に促されて中心にいた青年が湿らすように唇を舐めた。
 口にしてしまえばそれはどうしようもない現実で、そぐそこに迫った未来は最早避けようもなく。だからこそ、己の家庭教師はこうして皆を集めたのだろうと青年は察していた。
 旅立つ日まで、あと半年もない。

「皆が…俺と一緒に行くことを、決意してくれて、本当に、嬉しい」

 一瞬「僕は違うよ」と言いたげな視線を感じたが、それは敢えて無視をした。結局彼がそう動くと決めたのも、自分と関わってしまったせいに他ならない。

「俺はまだ力も足りなくて、みんなの助けを必要としてる」

 右腕になると断言して憚らない青年の、自分よりも高い視線が食い入るように自分を見つめていた。その反対側には、幼い頃の憧れだった、いつだって頼りになる笑顔の親友。
 本当は、怖い。
 自分の運命に他者を巻き込んでしまうことが。
 それでも、彼らは自分の意思でそれを決めたのだから、それを阻む権利は俺にはない。

「だから、俺が、皆を守るよ」

 力不足かもしれないけれど。
 大切なものくらい、守れると信じたい。
 いや、守ってみせる。
 孤独な復讐者も、甘えん坊の居候も、孤高の独裁者も、陽気なパンチャーも。
 そして、俺の大切なヒットマンも。

「それが、俺の誓いだ」

 じっと皆を見据えて言った俺に、リボーンが僅かに笑みを零す。

「まぁ、及第点だな」

 感極まった右腕候補の僅かに啜る鼻音が響く中で、俺は少しだけ気恥ずかしく、笑った。
 準備は滞りなく進んでいて、その道を遮るものは何もない。


 日本を経つのは、次の春に迫っていた。

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マザーランド<ツナとママン>

※旅立ちの日。別れを迎えた母の気持ち。














マザーランド





 逆光の中門の前に立った息子を見上げる角度が随分苦しくなってることに、その時漸く気付いたの。




(ああ、つっくんったら、いつの間にこんなに大きくなってたのね)
 馬鹿な子ほど可愛いとよく言うけれど、私が授かった子は一人だけだったし、それが例えどんな子であっても愛しいことには違いなかった。
(だって、母親なんだもの)
 実際息子は少々要領が悪く、世間でいう落ちこぼれだったのかもしれないけれど、そんなことは関係ない。
 この身体に命が宿ったその瞬間から、一度として彼を愛さなかったことなんてなかった。
(どうしようもなく、愛してるの)
 影になった表情を、じっと見る。
 ちょっとだけ、泣きそうな顔をしていた。
(泣いてもいいのに)
 そしたら、引き止めることもできたかもしれない。でも、自分の意思で涙を堪え、未来へ向かおうとしている息子に、そんなことは言えなかった。
(強くなったのね、つっくん)
 その事実は、心強さと、少しの寂しさを私に齎す。
 彼が、ただ強くなっただけだとは思わなかった。優しさを人に与えることができる強さ、思いを行動に移す強さ。そういったものを彼は得て、そんな息子が自慢だった。
(でもね、つっくん。泣けないような強さなら、そんなのはいらないわ)
 泣くべき時にも泣けないような、そんな人にはなってほしくなかった。私は多くは知らないけれど、息子が想像もつかない世界へと踏み出したことくらい、わかる。息子の大切な、そして私から見てもとても頼りになる友達たちが彼の傍にいてくれることが、救いだった。きっと彼等はお互いに支え競いあって、そして今よりもっと大きくなるのだろう。
(言いたいことは沢山あるのに)
 下手に何かを言うと、いけないと思っていることを口に出してしまいそうで。
 だから、大きくなったその姿を焼き付けるようにじっと見つめた。
 それは一瞬のような、もう一時間もそうしていたような。
 緩く微笑を浮かべた唇が、小さく開かれ、息を零す。渇いた唇を湿らせるように、小さく噛んだ。
(緊張、してるのね)
 見知った息子の癖に愛しさが込み上げる。
 遠い空のむこうに旅立つ息子。
「母さん。行ってきます」
「…いってらっしゃい、つっくん」
 万感の思いを込めて、ただ、それだけ。
(いつだって帰ってきていいの。だってつっくんの家はここなんだもの)
 激しく変わる環境の中で押し潰されることがないように。
 いつだって、ここで私は待ってるから。
(つっくん、覚えてて)
 青い空の下を未来へと歩き出した息子に、手を振る。
 笑顔で、見送った。
 彼が安心して先に進めるよう、そしてこの場所が少しでも彼の寄り所となれるよう。
「いってらっしゃい、つっくん!」
 やがて道の向こうに消えた背中に、それでも手を降り続けた。
(愛してるわ、つっくん)
 彼の向かった地も、この空は繋がっている。
(ひとりじゃないって、知ってるの)
 悲しみも痛みももう癒してはあげられないけど、でもこの空を見上げればきっと。


 愛してる。愛してるわ、つっくん。
 貴方の幸せを、いつでも願ってる。



 滲んだ涙を振り切って見上げた空を、雲が、ゆっくりと横切った。



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