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日々、つれづれなるままに
Posted on Friday, Mar 19, 2010 03:01
※これはリボーンで出した合同誌「14歳のハローワーク」締め文にしようかなーと考えていてボツったお話です。(お話というほどのものではない)
●ハロワク本を、ツナが読みました。
ぱたん、と本を閉じる。
(教科書以外の本、久しぶりに読んだなぁ……)
身体が固まった気がする。ふぁ~あ、と。欠伸と同時に伸びをした。そのまま、背後のベッドに寄り掛かる。
手の中の本をもう一度開き、ぺらりぺらりページをとめくると、今読んだばかりの内容が頭の中に呼び起こされた。
「いろんな職業が、あるんだ」
知らなかった。
小さな頃は、巨大なロボットになりたかった。憧れのヒーローに、俺もなれると思ってた。
それが不可能だと知ったのは、小学校も半ば頃。
その頃になると俺は、足も速くなければ頭もよくない自分に気付きだしていて、与えられた「ダメツナ」という称号を嫌いながらもどこかでそれに安堵していた。
だってダメツナなのだ。
できなくて当たり前。
それはとても、楽だった。
(…でも、リボーンがきたから)
無理矢理に尻を叩かれて、諦めないことを覚えさせられた。
乱暴で、どうしようもなく、理不尽で。
俺様な家庭教師。
世界が一変した。
(……大切なものも、たくさんできた)
親友。
仲間。
守りたいもの。
それはみんな、リボーンが来てから得たものだった。
ぺらり、とまたページをめくる。
(今ならまだ……俺にはたくさん、選ぶことができる道があるんだ、よな?)
手の中にあるのはただの紙の束なのに、それがものすごく重く感じた。
その全ての可能性を、捨ててしまうことへの恐怖。
(でも、さ。リボーン)
はちゃめちゃな扱きに逃げて、理不尽な現実に怒って、やりきれない想いに泣いて、なんでもない毎日に笑いあった。
その全てに、リボーンがいる。
(今更…さ、考えられないよね)
リボーンがいない日々も。
その中にいる俺も。
今だって怖くて、逃げ出したい気持ちで一杯だけど。大切な人達を、誰ひとりとして失いたくなかった。
だから。
(まだ時々迷うけど。俺は、俺の意思で、きっと…)
失わないために。
大切な場所を守るために。
未来はわからない。けれど。
(だってさ)
ぱたり、と閉じた本の、なめらかな表紙に指を滑らす。
(俺はやっぱりお前の生徒、だもんな)
閉じた本の上でぎゅ、と握った手の中に。
未来を、俺は掴んでいた。
Posted on Wednesday, Mar 04, 2009 22:28
優しい時が過ぎるのは余りにも早くて、宝石のような日々は過去のものとなった。
ツナさん、知ってますか?
ハルには、ひとつだけ、誰にも負けないとっときのものがあるんですよ。
ハルはそれを思うだけで、心がふわふわ~って軽くなって、きゅきゅーってときめいて、とおってもハッピーでスウィートで優しい気持ちになれるんです。
だから、ハルのことは心配しないでください。
今のハルは、ツナさんの足手まといになっちゃうって、ハル、わかってます。
だから、今はついて行きません。
でもでもっ、絶対に強くなって、絶対に絶対に後から追いかけます!!
覚悟しててくださいね。
ハルはツナさんがびっくりするくらいダイナマイトで清楚な知的美人になる予定ですから!
だから、それまで、ハルはハルがやるべきことをします。
あ、そうだ! ハル、イタリア語を習い始めたんですよ? 先生にも覚えがいいってよく褒められちゃいます。流石ハルですね!
でもホントは、すっごく寂しいです。
ツナさんに会えなくなるって考えるだけで、眠れなくなっちゃうくらい、胸がぎゅぎゅ~って苦しいです。
ツナさんと、ずっと一緒にいたいです。
だから、ツナさんの隣に早く立てるように、ハル、ずえったいに頑張ります!
見ててくださいね!
ハルの、ツナさんを想う気持ちは、世界最強です!!
「……はは、ハルらしいや」
別れ際に渡された手紙が、手の上でかさりと音を立てる。
「寝ておけダメツナ。向こうに着いたら暫くは休むヒマもねーぞ」
「………うん」
膝に散らばった、いくつかの封筒。
それを全て開ける頃には、俺は何を思っているだろう。
リクライニングチェアに背を預けて、目を閉じる。
最後に見えた空はどこまでも青く透明に澄んで、まるでもう戻ることのない輝かしい日々の象徴のように、そこに在った。
Posted on Tuesday, Dec 16, 2008 22:28
Posted on Sunday, Oct 26, 2008 21:20
Posted on Wednesday, Oct 22, 2008 22:37
※旅立ちの日。別れを迎えた母の気持ち。
マザーランド
逆光の中門の前に立った息子を見上げる角度が随分苦しくなってることに、その時漸く気付いたの。
(ああ、つっくんったら、いつの間にこんなに大きくなってたのね)
馬鹿な子ほど可愛いとよく言うけれど、私が授かった子は一人だけだったし、それが例えどんな子であっても愛しいことには違いなかった。
(だって、母親なんだもの)
実際息子は少々要領が悪く、世間でいう落ちこぼれだったのかもしれないけれど、そんなことは関係ない。
この身体に命が宿ったその瞬間から、一度として彼を愛さなかったことなんてなかった。
(どうしようもなく、愛してるの)
影になった表情を、じっと見る。
ちょっとだけ、泣きそうな顔をしていた。
(泣いてもいいのに)
そしたら、引き止めることもできたかもしれない。でも、自分の意思で涙を堪え、未来へ向かおうとしている息子に、そんなことは言えなかった。
(強くなったのね、つっくん)
その事実は、心強さと、少しの寂しさを私に齎す。
彼が、ただ強くなっただけだとは思わなかった。優しさを人に与えることができる強さ、思いを行動に移す強さ。そういったものを彼は得て、そんな息子が自慢だった。
(でもね、つっくん。泣けないような強さなら、そんなのはいらないわ)
泣くべき時にも泣けないような、そんな人にはなってほしくなかった。私は多くは知らないけれど、息子が想像もつかない世界へと踏み出したことくらい、わかる。息子の大切な、そして私から見てもとても頼りになる友達たちが彼の傍にいてくれることが、救いだった。きっと彼等はお互いに支え競いあって、そして今よりもっと大きくなるのだろう。
(言いたいことは沢山あるのに)
下手に何かを言うと、いけないと思っていることを口に出してしまいそうで。
だから、大きくなったその姿を焼き付けるようにじっと見つめた。
それは一瞬のような、もう一時間もそうしていたような。
緩く微笑を浮かべた唇が、小さく開かれ、息を零す。渇いた唇を湿らせるように、小さく噛んだ。
(緊張、してるのね)
見知った息子の癖に愛しさが込み上げる。
遠い空のむこうに旅立つ息子。
「母さん。行ってきます」
「…いってらっしゃい、つっくん」
万感の思いを込めて、ただ、それだけ。
(いつだって帰ってきていいの。だってつっくんの家はここなんだもの)
激しく変わる環境の中で押し潰されることがないように。
いつだって、ここで私は待ってるから。
(つっくん、覚えてて)
青い空の下を未来へと歩き出した息子に、手を振る。
笑顔で、見送った。
彼が安心して先に進めるよう、そしてこの場所が少しでも彼の寄り所となれるよう。
「いってらっしゃい、つっくん!」
やがて道の向こうに消えた背中に、それでも手を降り続けた。
(愛してるわ、つっくん)
彼の向かった地も、この空は繋がっている。
(ひとりじゃないって、知ってるの)
悲しみも痛みももう癒してはあげられないけど、でもこの空を見上げればきっと。
愛してる。愛してるわ、つっくん。
貴方の幸せを、いつでも願ってる。
滲んだ涙を振り切って見上げた空を、雲が、ゆっくりと横切った。