忍者ブログ

« 気分転換 | 9日のお返事。 »

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

« 気分転換 | 9日のお返事。 »

例えばのポッキーゲーム<子供の領分ss>

「例えばさ、今から罰ゲームで茅野とポッキーゲームしろって言われたらどーする?」


 新田が突拍子もないことはよく知っていたけれど、それでもここまで脈絡がないと対処に困る。せめてもの救いは現在児玉に連れられて委員会にでている茅野がここにいないことだろうか。もしいたら速攻でブリザード吹き荒れる視線と穴掘って埋まりたくなるほどの毒舌に晒されていただろうことは想像に堅い。
「…どうするって……どんな答えを期待してるワケ? 新田は」
 答えようもなく椎名に視線を逃がすと、真意の見えない笑みでごまかされた。
「あ、逃げんなよ小林ィ! じゃじゃ馬姫のナイト様なんだからな」
「ちょ、それ茅野の前でいったら洒落になんないんだから……!」
 咄嗟に口を塞ごうと伸ばした手を、軽くはたかれる。
「いーじゃないの。満更でもないんだろ。なぁ、椎名もそう思うよな」
「……あのねぇ、新田…」
 恨みを込めてねめつけた俺の視線を笑ってかわした新田が同意を求め、椎名に呼び掛けた。
「うーん…俺に言われても困るけど…」
 そうだそうだ、いってやれ! と心で騒いだ俺を、椎名の高校生とは思えないほど落ち着いた笑みが裏切る。
「まずじゃじゃ馬姫の茅野がそれを受け入れるか、だよね」
「椎名……」
 与えられたのは泥船に等しく、足を乗せただけでずぶずぶと沈んでいきそうだ。下手にコメントすることもできない。
(問題はソコじゃないだろぉ……)
 常識人はもはや俺一人、だったのだろうか。嫌過ぎる。
「でもアレだよな。茅野って女との浮いたウワサはひとつもないのに今年は男とのウワサが絶えなくて……結構気の毒なヤツだよな」
「新田ぁ……」
(勘弁してよ)
 その、ツイてないウワサの中には俺だって入っているのである。間違っても進んで入ったわけではないが。
「しかも豪華メンバーだしね。生徒会の武藤さんにイロオトコキングの加賀さん。首席ヤンキーの堤にハイジャン王子の小林………流石茅野、といったところかな」
「椎名まで」
 神はいない。少なくとも、今現在ここには。
「あと結構気になるのが昔のサッカー繋がりの知り合い、だよなぁ……川島とか?」
「………」
 俺は中学が茅野といっしょだった。だから、新田や椎名が知らない、知りたがっていることも知ってる。けれど結局はそれも、当人達が経験したことの十分の一にも満たないのだ。あの時間違いなく彼等は輝いていた。空高く舞い上がったその瞬間に前触れもなく他人の悪意によって地に落とされるのは、どんな気分だろう。俺にはわからない。けれど俺は悔しくて痛くて、そうしてしまった人間を憎んだ。
「俺は、言わないからね。茅野が言わないことを」
 はっきりと口にだした拒否に一瞬新田はぱちくりと瞬きをし。
「うん。わかってる」
「わ、わかってるって…」
 拍子抜けだ。
「俺だってそんなに阿保じゃないよ、小林」
(いや、阿保だとはいってないけど)
 思いの外強い視線に、呆気にとられた。だから、椎名の言葉は不意打ちだったのだ。
「そっか。小林にとってネックは堤じゃなくて川島なんだね」
「………!」
 にこにこと笑う椎名。
 何食わない顔でえげつないあたりをつついてくるので油断できないのだ。本当に。
 言葉につまってしまったのが、何より真実を示していた。
「…椎名」
 怨みがましい視線も、椎名の微笑の前では無力だ。
「うん。ちょっと気になってたんだよね。小林、堤が出てきても何も動揺してなかったのに、川島と茅野が一緒の時はなんか変だったからさ」
 だから揺さぶってみたというのだろうか。迷惑限りない。
「……あれー? つーか、なんの話してたんだっけ?」
(新田ァ………)
 ぱくり、ぽきり、とポッキーを食べながらのたもうた新田に脱力する。
 いい加減にしてほしい。ホントこところ。
 がらりっ
「なんだオマエら。まだ帰ってなかったのか。暇人だな」
「「「茅野」」」
 がつん、どごん、ばん!
 と賑やかな音を立てた後、僅か三秒で茅野の帰り支度はすんでいた。
 呆気にとられる俺らの前で。
「じゃ、な。お先」
 がらっ、と扉を開けて、去っていった。
 どうやら今日は伝達のみの集会だったらしい。
(……ああ、俺も部活行かなきゃ)
「……かえろっか」
「そうだね。小林も部活頑張って」
「あ、うん」
 図らずもかちあった椎名の視線。
(きっと茅野なら阿保か、の一言で切り捨てておしまいだな)
 容易に想像できた結末に、こっそり椎名と苦笑しあった。



吉原理恵子著『子供の領分』より
PR

その他ss : Comment (1) : Trackback ()

Comment


Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Backlinks |  2012.05.13 at 21:56 編集
Check out this crazy service that sends thousands of visitors to your web page automatically!

Hey tsuwamono.blog.shinobi.jp admin

I wanted to tell you about this website I used with great results, that drives thousands of targeted visitors to your site who are dying to spend money!

You’ve probably already know that creating great content is only half the battle when it comes to running a successful website. The second half of the equation is DRIVING TRAFFIC!

With this service, you can forget about the tedious process of posting backlinks because they do everything for you so you can focus on more important things, like dealing with the flood of traffic to your site!

And that’s not all! this service is SUPER AFFORDABLE and will direct thousands of new visitors to your site in just hours, GUARANTEED!

This is the only service that can skyrocket your page to the top of the search engines!

You can check it out here:

<a href=http://xrumerservice.org>backlink service</a>

Best,

Jason

Trackback

Trackback URL: