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« ドウルイハッケン! | 10月24日のお返事 »
Posted on Sunday, Oct 26, 2008 21:20
今年の24時間テレビのテーマ。
すなわち、その頃に書いてたネタというわけです……(汗)
「誓い」
「…けしてお傍を離れないと、誓います。この命の最後まで、貴方に捧げることを」
静かに、しかしはっきりとした声は空気によく通った。主の手を取り口付けるかに見えたその仕草は、しかし手の甲に額づくだけに止まる。
「…獄寺くん」
離しがたいと言う様に手を握ったままの細身の美青年を、そのすぐ脇にいた背の高い青年が、いかにも楽しそうに喉の奥でくぐもった笑いを零し「そのヘンにしとけよ獄寺。ツナが困ってんぜ」と止めた。途端に噛み付く友人を笑顔でいなし、いつも笑みの形に緩んだ唇を大きく開く。
「なんかさ、想像すると楽しくなるな! これからどうなんのかさ、さっぱり予測つかねーもん!」
「……そうかな。俺なんか怖くてたまらないけど」
裏表のない青年の笑みに、しかし輪の中心にいた人物が気弱な言葉と、しかしそれを裏切るような迷いのない表情で苦笑を漏らした。
「十代目! 気になさることはございません! この野球馬鹿の言葉に深い意味なんてありませんよ。なんっせ頭にゃなんにも詰まってないんですからね!」
「ヒッデーなぁ獄寺」
辛辣ともいえる言葉に、しかし背の高い青年は笑っていた。その笑みがしんと沈むように奥にこもり、代わりに真摯な表情が顔をだす。
「俺は、友達は絶対に裏切らねぇ」
「山本」
「極限熱いな! 俺も誓うぞ! 俺はいつでも極限であると!」
「…てめーは誓わなくともそうだろが」
「ははは! 笹川のにーちゃんおもしれーよな!」
「む? そうか?」
「…お兄さん……」
力が抜けたように肩を落とした青年の袖を引っ張る少年。
「俺! 俺もツナの力になるんだもんね!! ボスは好きにしていいっていったんだもん!」
いち早く故郷へと帰っていた少年は、久しぶりに訪れた日本に気後れしているのか、それとも集まったメンバーの中で一番の安全地帯であると無意識の認識をしているのか、再会してから穏やかな青年の傍を離れない。
「ランボ」
声は静かな囁きのように、しかし幾多の感情を含む。
少年は嬉しそうに、誇らしそうに、しかし周囲の無言の威圧に負けて青年の袖を手放した。
その横で、肩先まで伸ばした髪を一つに括った青年がくぐもった笑いを零す。
「誓い、ですか。そんな陳腐なものに何の意味があるのでしょうね。言葉で約したものなど、塵ほどの拘束力もない」
「骸」
「僕は貴方を守るでしょう。けれどそれは、交換条件によって僕がここに在るための契約でしかない。仲間意識などという生ぬるいものはご遠慮いたしますよ」
「…わかっている。それでも、ありがとう」
「相変わらず甘い…」
「そうかな。…クロームたちも行くんだろう?」
「連れて行くのはクロームだけですよ。あの二人は僕がいなくともやっていけますから」
「……そうなんだ」
思いもかけない驚きに、青年の言葉が止まる。
己の断ち切ってしまった絆に今更ながらに慄く青年はしかし、自分が断ち切ったものがそれだけではないと、知っていた。
「くだらない。あまり群れてると咬み殺すよ」
「…雲雀さん」
少し離れた場所で腕を組んだ彼の肩には、既に見慣れた学ランの姿はない。
そして己が家庭教師がムリヤリ連れてきたとの言葉が示す当然の帰結として、下手に触れば直ぐにでも暴れだしそうなほど不機嫌だった。
「そういうな雲雀。たまにはこういうのもいいだろ?」
一部のみ氷点下の空気を全く理解しない口調でのたまった家庭教師を、物騒な麗人が一瞥した。
「赤ん坊の言うことだからね。今日だけは我慢してあげる。でも君の頼みでも二度目はないよ?」
「ああ、わかったぞ雲雀」
背の高い青年の肩で偉そうに笑った家庭教師がちょっと憎らしいと苦労症の青年は思った。けれど取り合えず黒で身を固めた麗人は苛立ちを周囲にぶつけることは止めてくれたようで。
「それで雲雀。オマエの誓いはなんだ」
「……僕は、僕は僕のしたいことしかしない」
「「「「…………」」」」
それは誓いといわないのでは、とまだ幼い少年とのたまった本人以外が心をひとつにしたが、しかし逆らえずに沈黙する。
「そうか」
特に何を言うこともなく頷いた家庭教師に微妙な視線を注ぎつつ、空気に促されて中心にいた青年が湿らすように唇を舐めた。
口にしてしまえばそれはどうしようもない現実で、そぐそこに迫った未来は最早避けようもなく。だからこそ、己の家庭教師はこうして皆を集めたのだろうと青年は察していた。
旅立つ日まで、あと半年もない。
「皆が…俺と一緒に行くことを、決意してくれて、本当に、嬉しい」
一瞬「僕は違うよ」と言いたげな視線を感じたが、それは敢えて無視をした。結局彼がそう動くと決めたのも、自分と関わってしまったせいに他ならない。
「俺はまだ力も足りなくて、みんなの助けを必要としてる」
右腕になると断言して憚らない青年の、自分よりも高い視線が食い入るように自分を見つめていた。その反対側には、幼い頃の憧れだった、いつだって頼りになる笑顔の親友。
本当は、怖い。
自分の運命に他者を巻き込んでしまうことが。
それでも、彼らは自分の意思でそれを決めたのだから、それを阻む権利は俺にはない。
「だから、俺が、皆を守るよ」
力不足かもしれないけれど。
大切なものくらい、守れると信じたい。
いや、守ってみせる。
孤独な復讐者も、甘えん坊の居候も、孤高の独裁者も、陽気なパンチャーも。
そして、俺の大切なヒットマンも。
「それが、俺の誓いだ」
じっと皆を見据えて言った俺に、リボーンが僅かに笑みを零す。
「まぁ、及第点だな」
感極まった右腕候補の僅かに啜る鼻音が響く中で、俺は少しだけ気恥ずかしく、笑った。
準備は滞りなく進んでいて、その道を遮るものは何もない。
日本を経つのは、次の春に迫っていた。PR
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