「タダ飯……、ですか？」
＜ハイ。先日のことになりますが、新宿にてタダ飯をかっくらいました＞
「……？ タダってことはタダですよね？」
＜そですよー。無料＞
「試食か何かですか？」
＜や。ソレが違うんですよー。普通に良いお値段するお店に入ってご飯を食べ、結果としてタダになりまして＞
「ますますよく分からないんですけれど、何かイベントでもあったんですか？ 1万人目とかなんとか」
＜そんなことする店があるのかしりませんが、違いますよー＞
「では、なんなんです」
＜や。それがですね、相方りすけと二人で入り、友人がオムライスとデザート、私がスープとサラダを頼んだんですが＞
「いたって普通ですね」
＜そです。ちなみにデザートは食後ということで注文してます。……で、始めにスープがきまして＞
「はい」
＜次にサラダが＞
「はい」
＜で、ここで何故か水がようやくでてきまして＞
「……は？」
＜しかしその後は待てど暮らせど残りが出てこない＞
「オムライスとデザートが」
＜はい。出てきませんでした。で、とうとう私が食べ終わってしまいまして、そこで通りかかった店員さんを呼びとめ、「料理が出てこないのでもう会計して去る」旨を伝えたところ、店員さんが慌てて食後だと聞いてるといいはじめ＞
「食後、ですか？ それってもしかして……」
＜明らかにデザートと間違えられてますね。食後にオムライスって…ありえないし＞
「そうですよね」
＜ハイ。結局時間もかかりすぎなので食べたもんだけ会計をしにレジへ。で、そこでまた問題が＞
「今度はなんだったんです？」
＜高かったんです。スープとサラダだけなので千円くらいのはずが、その倍とられそうになりまして＞
「……まさか」
＜はい。食ってもいないオムライスの代金ですよーあはは＞
「………」
＜まぁ、そこでぷちんときた私が「オムライスはきてないんですけど！？」と声を荒げ、漸く店員さんが持ってきてなかったのがデザートだけじゃなかったことに気がついたモヨウ…＞
「なってませんね」
＜ホントですよう！ 道理でまだ来てないって一度言った時に「なんだコイツラ」って目で見られたはずですよ！ だって食後といって頼んだデザートだけ持ってきてないと思ってたわけですから！！＞
「それでタダになったんですか…」
＜そです。ご迷惑をかけたお詫びにって。でもりすけが被害被ったのに、タダになったのは私なんですよね。どうなんでしょう、コレ＞
「………なんとも」
＜ちなみに店でた後で勘違いに気付いたらしいウェイターの兄ちゃんが走ってきて謝ってました。どっ疲れっす＞
「りすけさんにお気の毒様ですとお伝えください」
＜はいー（半泣）＞
桑原水菜著『炎の蜃気楼』より
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