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« 2009年内の拍手お返事。 | 何かに飢えているらしい »

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永遠の0<百田尚樹>

初めて読む作者の本でした。ある本屋でオススメのカードが付けられているのを見て、手にとって、何ページかを読んで、一度は棚に戻しました。でもやっぱり気になったのでとりあえず古本屋を覗いてみて(苦笑)見つけられず、そして数日後には本屋で購入したのでした。


簡単に言ってしまうと、特攻メインの歴史小説です。もう少し詳しく言うと、フリーライターの姉と、司法試験に挑戦しては落ちている司法試験浪人生の弟が、特攻で亡くなった実祖父(この言い方は正しいのだろうか…?)の過去を辿る日々が描かれています。時間に余裕のある弟が(姉の依頼…というか命令で?)調査の中心となり戦友会を通して実祖父との思い出を持つ人々を巡っていくその記録の中には、戦争中の日本の破滅へと向かっていく様が、ありありと描かれています。理不尽で暴力的な世界が本当にあったものなのだということが、辛く、哀しく、実祖父の過去を通して語られる戦争を経験した人々の真摯で極限の思いが頁を捲るたびに重く心に沈んでいきます。娘の顔を見ることもなく、海原に広がる空に散っていった実祖父。その人は上官や同じ戦闘機乗りから臆病者と罵られるほど常に「死にたくない」「必ず生きて、妻と娘のもとへ帰る」といい続けた人でした。天才的な飛行機乗りで、下士官にまで丁寧語を話す、優しい軍人。彼との思い出を持つ人々の中で、よくも悪くも強烈な、稀有な人間でした。そんな彼を、死に追いやった戦争。徐々に明らかになっていく人物像と予想していなかった結末に、涙が零れました。私は、宮部という人間がそこにいたら、尊敬せずにはいられないと思います。もし今を生きていたら、彼は善良な、けれどそう珍しくもない人々の中の一人だったでしょう。けれどもこの状況の中で、時代にそぐわぬ思考を持ち続け、そして思うとおりに生きていたということが、すごい。数々のドラマがあって、ドラマの数だけ泣いたり苦しんだりする人たちがいて、けして楽しい本ではないと思います。けれど、文章に引き込まれます。


読む価値のある本です。
そして、きっと私には、本当に戦争で戦った人たちの話は書けないだろうと、そう思いました。

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