今回のご紹介は、茅田砂胡のデルフィニア戦記です。
ファンタジーものとしては有名な大作ですので知っている方も沢山いるかもしれませんが、私がデルフィニア戦記と出会ったのは大学生の頃でした。茅田砂胡の作品で一番最初に読んだのは三つ子の繰り広げる珍妙な恋愛シリーズが一番最初だったのですが、その後スカーレット・ウィザードを読み、茅田砂胡に嵌り、長編であるデルフィニア戦記に手を伸ばしたのがきっかけです。
そして昨年あたりでしょうか。中央公論新社から文庫版でデルフィニア戦記がでていると知り、全18巻、番外編2巻の計20冊を大人買いしてしまったのでした…あう。
主人公は、リィと呼ばれる、異世界へとひとり飛ばされてしまった少年らしき人物。少年らしき…というのは本人がそう主張するからであり、実際のリィは美しい少女の姿でその異世界にめぐりあいました。背を覆う金の巻き毛に双緑の瞳、整った顔かたちに白く滑らかな肌…というと異国のオヒメサマたる資格十分な条件がそろい踏みですが、リィには更に、馬より早く駆ける足と、大の男を投げ飛ばせる膂力までもを持っている、なんとも型破りの主人公でもあります。しかも綺麗な顔に似合わぬ少年のような乱雑な言葉。もうそれだけでいろんなトラブルが彼女(彼)を取り巻いていくのが目に見えていますが、そこに更に国を追われた王様が同行することになるのでもうたまりません。非常時のオンパレード。息つく暇もない展開が待ち受けています。
方や異国に一人放り出された少女(少年)、方や国を追われ、一人立ち向かおうとする青年。
それだけ聞くと物語はどうしてもシリアスに偏りがちになろうかと思われますが、実際そうでもあるのですが、それでも二人の珍道中は笑いにも溢れ、やがて関わっていく人々とのやり取りに心和み、リィが異国人として見たデルフィニアの世界がそこに広がっていくと、もう引きずりこまれずにいられません。リィは王女になったり王妃になったり、囚われた王を助けにいったり求婚されたり命を狙われたり囚われたりと忙しい日々ですが、その中で描かれる人々の姿がまた秀逸なんですよね。ドラ将軍に惚れたり、ナディル王子に眉を顰めたり、これだけ沢山の人を、その人らしく書ききるって凄い。本当に尊敬します。
恋愛色は、あまり強くないです。ところどころでカップル発生はしますが、肝心のリィはまだ「発情期前」ということで、そういった意味ではまったく周囲に興味を示しません。時折デルフィニアでの相棒である「ウォル」ことデルフィニア王との微笑ましいやり取りはありますが、腐な目で見ることはできません…。ただ純粋に、面白い。
オススメです。
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